小さな喫茶店–シェフに教えてもらったこと–

none_img_column??? 2005.03.28

T子?です。

レストラン修行時代、シェフに多くのことを教わりました。
少しずつこのホームページで紹介していこうと思います。
自分に対する他人の評価というのは、時によって、とても厳しく、自分の能力以上の事を求められることがあります。

それは小さい組織になればなるほど求められるものだと思います。

小さい組織は、そこを経営している人にとって、なにかしら思い入れがあっての仕事だとおもいます。もし、そこから自分がいなくなったときにどういう状況か、というのはとても心配なことだと思います。

例えばここが小さな喫茶店だとします。

店主はいつも丁寧にコーヒーを入れ、手作りのお菓子を毎日作ってお客様に喜んでもらえるようがんばっていました。
そんな評判がいつのまにか街に広がってどんどんお客様が増えてきています。
うれしいことですが、店主はひとりでは大変になり、人を雇うようになりました。
その従業員に一つひとつ自分のやり方を教えて、仕事を任せられるようになり、店主も少し安心していました。
そしてある日、店主は大事な用事で店を離れなければならなくなりました。
そこでその従業員に任せて外出しました。しかし、いつもはきちんと仕事をしていた従業員も、いつもの厳しい目がなくなると、本来の自分がでてしまい、少しずつ手を抜いて仕事をしていました。
あるお客様は、 「 店主のコーヒーが飲みたい 」? と帰ってしまいました。
しかし、ほとんどのお客様はその従業員の入れたコーヒーを 黙って 飲みました。

店主は店を離れた不安でいっぱいながらも、戻ってきた時に何事も無く店が営業していることを見、安心して、またいつものようにコーヒーを入れお菓子を作りました。

ところが、何度かそんなことを繰り返すうち、いつのまにか、いつも来ていたお客様が来なくなっていました。
そして、そんなある日、店主は噂を聞きました。

『 店主がいない間のコーヒーはとてもまずく、味が落ちたね。』 と …

つまり、店主は従業員に仕事の方法は教えられても、店主がこれまでにどんな想いで小さい喫茶店を守ってきたのかを教えることはできなかったのです。その結果、毎日、毎日、努力をして少しずつ増えたお客様をそんな一瞬で失ってしまっていたのです。

その従業員は何の苦労もしないで「方法」だけを教えてもらった結果、『仕事をこなす』ことはできてもそれ以上のことはしようとはしませんでした。

もうすこし店主の努力、つまり想いとか、思い入れを分かろうとしていたならこんな結果にはならなかったのではないでしょうか?

当時、私たちはシェフがどんな想いでレストランを開きお客様を迎えていたかを教えてもらいました、でもそのことを知らないで「ただ働く」のでなく、周りを見て、「考えて仕事をする」ように教えていただきました。時には、激しい情熱で・・・

いま、私はシェフに会っても恥ずかしくない仕事をしているでしょうか?  少し不安です。

— 自分がほんとうに何者なのか示すのは、持っている能力ではなく、自分がどのような選択をするかということ。
ハリーポッターと秘密の部屋より

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