医療の「安全」ということについて

ほぼ毎日、同じことを手を変え品を変えしながら朝礼で繰り返して話しています。

もし、病院という組織が、医療事故を起こしたら患者さんが一時大いに離れ、回復するのに5年以上はかかる。しかしながら、薬局はどうだろう?もし、調剤過誤(調剤事故)をおこしたら、一発廃業。二度と同じ経営で再開することは叶わない。

このことは肝に銘じなければいけません。

年に二、三回東京に出かけて忘れかけたことをおさらいしてきます。先日6月にも医療安全基礎講座をまた聞いてきました。今回は、安全とリスクについてここに書いてみたいと思います。習ったままですみません(笑)が以下のようになります。

[ 安全の定義 ]

  • そもそも安全は存在しない
  • 常に存在するのは危険(リスク)である。
  • 危険をいかに的確に予測し、確実に防止する努力をするかが、安全である。
  • 安全とは一人ひとりが力をあわせて作り出すものである。

[ リスクの定義 ]

  • ある目的に到達するうえで、予期せずに発生する危険性のこと。
  • 便益行為に伴う危険性
  • すなわち、医療事故はリスクそのものである。

何か、医療に係わる事故が起こったとき、原因を考える際「あいつなら」とか、「誰がそれをやったのか」とか、「彼の不注意」だから、と個人のやったことにしがちですがそれは間違っています。事故は、個人の個人的な問題ではけっしてないしそれをやっても防止策には全くなりえないという事です。
わたしも全くこの考えに同感です。私の薬局の運営はこの考えに基づいて危機管理をしているといっても過言ではありません。薬局という労働環境の問題だから、これを解決しないといけない。

つまり、昨今の原発事故にしても多くの報道でわかってしまった通り、経営として、組織としてお金をかけるべきところにかけていない事が事故の根本の原因だということです。

このシステムを使って、全自動錠剤分包機への錠剤補充、散薬装置瓶への散薬の補充、納品時に棚へ包装品を納入する際の検品などにも使っています。

調剤過誤防止システム

すべての錠剤をバーコードで管理

散薬秤量監査システム

全自動散薬分包機

これらの写真は去年から今年にかけて投資した安全対策です。

通常、処方箋を受け付けてから錠剤や外用剤や既製品の散薬などは計数調剤(数をカウントするもの)されます。入力した数値数量に従って棚から取り出すわけですが一番目の写真の端末を使って入力した数・品名が正しくピックアップされているかをバーコード管理します。二番目の写真がバーコードがついた引き出し。今大手の病院ではこの計数調剤も自動化されているようですが弊社のレベルでは過剰投資(ちょっとやせ我慢的ですが)です。
三番目の写真は散薬監査システム。何をどれだけ量るべきか、また、量ったか、を記録します。このデータは4番目の写真の散薬分包機に渡され患者さんの名前情報を含めて印字、分包されます。散薬を図る頻度のことは別にして、軽量の手間が激減し量り間違い、包数の間違いを飛躍的に排除できるシステム構築ができたと思います。

よく薬局店舗に金をかける必要はないという経営者を見かけますが、私は経済的に許す状況なら、それには反対。環境を整えることは士気向上、帰属意識の向上になると思っています。

前の店舗を出た(引越した)のも、とにかくうなぎの寝床のように間口なく狭い、換気が悪くくさい、たくさんのスタッフが昼休みに休憩する場所もない、ロッカーも満足にない、手洗い歯磨きも台所でする、トイレも患者さんと一緒、そんな店舗を作って貸そうとする強欲大家に嫌気がさしたのが理由です。(もっとも、もう一つ大きな理由がありましたがナイショにします)
もし、あのままの環境を放置してしていたら…、経営者として 「 労働環境を放置した罪 」 は重い…という結果につながったかもしれません。リスクマネジメントという観点からは決して放置できないものでした。
#そんな自分を褒めたいと思います(笑)。

さて、話を戻してリスクマネジメント。
わたしが経営者としてスタッフに安全行動をとってもらえるような環境を作った。しかし、その後、私が現場にすべてを任せたよ!では、企業の安全文化は育たないでしょう。危険行動、事故の芽は十分に予測できるはずです。事故を未然に予防する、予測して対策を立てることがとても重要なことです。繰り返し繰り返し、危険についてスタッフ全員の認知を共有させるための方策を考えることが大事だとおもいます。

  • 船場吉兆
  • 赤福
  • 石屋製菓
  • ミートホープ
  • 雪印??? etc.

職場風土、安全文化の崩壊で社会的制裁を受けた企業になるわけにはいかないのです。落とした錠剤に、フッと息をかけて分包するような会社であってはいけない。8年前に書いたこのことが、実践されているかどうか、それをしないことが弊社の文化になっているかどうか…。

最後にもう一度習ったことのおさらいを書きます。

リスクマネジメントの定義

危険による不測の損害を、最小限の予防対策経費で最大の効果を得るための経営管理であり組織として行う安全戦略行為。

だそうです。

医療安全基礎講座2011

2011年6月、国際予防医学リスクマネージメント連盟主催で東京大学で行われた医療安全基礎講座2011に参加してきました。医療における安全をどうやって確保していくかということを主眼に、医療事故を予防、未然に防ぐためのヒューマンファクターを基本的な項目から学んできました。

三日間の座学は時に睡魔と格闘し、終了後の魅力的な宴会をどう過ごすかなど工夫が必要でしたがなんとか無事終了し受講修了証をいただいてきました。

ちょうど去年の今頃にも? 医療安全基礎講座2010? があり、このホームページでも紹介していましたね。一年はあっという間です。医療安全にかかわる講習会は一定規模の病院の場合参加が必須であるようですが多くは自前の費用で参加しているようです。東京で行われる講習会は全国規模での参加を前提としておりいつもその規模に精神的に触発されます。お金(費用)がかかることですが、薬局の経営者、勤務者にとっても参加してみる価値はあるでしょう。自己申告はまだありませんが、ここに示したように、可能性? は否定しておりません。

ひどい地震でした

2011年3月11日、東北関東で強烈な地震がありました。被災者の方に謹んで心よりお見舞い申し上げます。

私も、親戚知人友人がたくさん東北方面にいて、本人や、家族の安否がとても心配でした。4日目になり、最後まで安否がわからなかった気仙沼出身の同級生の家族が無事であることがわかりほっとして書いてます。

そんな中、今回あからさまになった原子力発電所(原発)の事故は やっぱり!と思いました。現在稼働している55基が、たぶん同じような環境であるという事は、想像を絶する危険を抱えているということでしょう?

過去、危機管理の講習会に去年から何度かでて思うことは「危機管理しなければいけない立場の人間ほど、保身にキュウキュウとして事実を隠す」ということです。

原子力安全保安院の人たちが、いわゆる役人であることに憤りを覚えます。TVでやってる後手後手の対応は、現場無視なんでしょうか。説明、歯切れ悪いですね。御用学者の方たちも、あなたが福島に住めばいいのに!と思ってしまうような安全妄想を繰り返すばかりだし、見ててイライラしました。説明している話はすべてが机上のものに感じられたのは、私だけでしょうか。まだまだ内容にごまかしがありそうです。

ここでも過去の教訓は生かされていなかった。

札幌は、他人事ではないですね。泊原発の周辺の街灯や道路が立派である理由は。。。
函館も、大間を控えてるし。恐ろしいことです。

今後は、新規は一件も作ってはいけないですね。

いわゆる反対のための反対ではない原発についての勉強会を、知人有識者に企画依頼しました。この方は、「政府すら東電側から本当のことを知らされていないものと思われます。」といってました。さもありなん、と思います。

最後に、深刻な医療危機がどんなものか、生の声をご紹介します。どこからどうしたか、は、医療安全の学会が、被災地とのコミュニケーションの場として設けたWEB上のやり取りから引用したと思って下さい。特定の部署を避けるため、伏せ字「?? —」を混ぜています。原発に関わる人は、これを見てもなんとも思わないのでしょうか。

—–Original Message—–
差出人: —–@–.ac.jp
日時: 2011年3月14日 12:05
宛先:???-office@??.net
件名: 応援乞う +放射能汚染の正確な情報

至急助けてください。県から国に要請が言っていないのでは?と思います。
全く災害対策本部が機能していません。

水 食糧 (飲料用のみならず医療用の水が底をつきそうで診療数を増やすことができない)
薬剤 透析液 サブラッド(もうすぐなくなります)
点滴液
ヨード剤
サーベイを行う放射線科医並びに放射線技師 交代要員
ガイガーカウンター
完結型ER 2組
大気中放射線量測定情報
職員通勤用ガソリン
衛星電話(県が全く災害対策本部として機能せず、病院間の連絡がつかない)

放射能汚染の正確な情報

院外地域で必要な物
除洗が必要な場合の大量の水、その後の着替え。
被ばく地域への被ばく者がシャワーを浴びることができる簡易施設を有する施設
部隊派遣
運びたされた避難民を収容する施設 防寒具 水、食糧

H医科大学 ??安全管理部
—–@–.ac.jp
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2010年9月の東京は暑かった

過去にも紹介しましたが、2010年9月4日(土) ?9月5日(日) 医薬品安全管理研修会2010 に出席してきました。

東京も9月になったら少しは酷暑もおさまるかと思って出かけたのですが、なんとその暑い事、暑い事。

それにしても、何百人という人が一堂に会し、2日間びっしりと勉強する姿には驚きました。また、地方に住んでいる人が地方にいることを言い訳にしない事に感銘を受けました。情報は自分で取りに行く、というわけですね。

前回、医療安全講習を終えて会社でその話を紹介しましたが、今回も自腹を切ってという人がとても多かったのではないか?と考えました。病院や、薬局がそんなに出張費を出してくれるとは思えないからです。それでも、勉強しに行く、情報を取りに行く。もはや姿勢の違い以外の何物でもないですね。

だいまる薬局では、自己申告してくれたら出張していいですよ、と伝えています。

じゃ、どこまでお金出してくれるの?と思うかもしれませんね。でも扉を開けるのは先に自分のお金を出してから、その覚悟ができてから、でしょう。これはうちの会社のハードルですね。ハードルを飛ぶ覚悟ができたら、扉をこじ開けたら、道は開けるのではないでしょうか。十分に話し合いする準備はできています。>To:Allスタッフ

医薬品過誤(医療過誤の中で特に医薬品による過誤)をどのように防ぐかという危機管理の在り方を改めて勉強しましたが、特に薬剤師は医師に対して助言者や、忠告者として存在するとのだ、という弁護士さんのお話には目を開かされる思いがしました。そのような責任があるから、高い給料ももらえるし、万が一の時は厳しい処分があるのでしょうね。

何も考えずに仕事をするのは、罪ですね。
改めてそう思った東京でした。

仕事は、スキルではない

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医療安全フォーラム2010 in 函館 (2010.5.22(土)13時?17時 市立函館病院) に参加してきました。
当日は、小さな開場でしたが満席。全国から参加者が集まっている会でした。

この日は、私にとっては新しい概念である「メディエーション」についての講演や、実際にメディエーターとして働いていらっしゃる数人のディスカッションなどが紹介されていました。

その中で、お話された言葉でとても印象に残っているものがこちら。

  • 仕事は、スキルではなく、ウィルである。話をするときに、どのように伝えよう、がスキルだとしたら、何を伝えよう、がウィルですというものでした。
    そうそう、そのとおり!技術的なものばかりに目が向いていると、ハートが伝わらないですから。
  • もうひとつ、医療過誤については、経験者、できる人ほど間違いを犯す可能性、確率が高くなる、という話。
    なぜ? できない人、初心者は、周りから積極的にマークされており、大きな間違いが少ない。でも、できると思われている人はどうか? あの人なら大丈夫でしょうという思い込みから関与が少なくなり、結果として、間違いが大きなものになる。
    おお、これは目から鱗(うろこ)的に そのとおりです。
  • 最後に、職場内で人間関係がもやもやしている場合、医療過誤を起こす原因になる可能性は高い。ソコに、今回の「メディエーション」という手法をつかって積極的に対話を奨励してくことで安全文化の醸成が行われる。患者さん中心に、今やっていることが患者さんの為になるか?という問いかけは必要、というものでした。
    ギクシャクした人間関係があると、意思の疎通がとれなくなることはあります。そうそう、そのとおり!

誰から言われたわけでもなく、自分の意思で、わざわざ函館まで出かけた甲斐はあった…、と思います。
仕事は、ウィルです、っていい言葉ですね。